再提出予定の入管法案に反対する声明

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1月23日召集の通常国会に、政府から「入管法改正案」が再び提出されると報道されています。
法案の内容に重大な懸念を感じ、当会と、クルド人難民Mさんを支援する会、クルド難民デニスさんとあゆむ会の3団体より声明を出しました。



政府が通常国会に再提出を予定する入管法案に反対する声明

私たちは日本で保護を求めるクルド難民申請者を支援する市民団体です。
今月23日に召集される通常国会に、政府から「入管法改正案」が再び提出されるとの報道を受け、法案の内容に重大な懸念を感じ、声明を発表します。

トルコ政府からの迫害を逃れ、日本に初めてクルド難民がやってきてから30年が経とうとしています。これまで数千人のトルコ国籍のクルド難民が日本政府に対して保護を求め、難民申請を行ってきました。しかし、難民として認定をされ、保護を得られた人は2022年7月に認定されたたった1人のみ。それ以外の人は全て不認定となっています。

入管庁から「難民性が認められないから帰国するように」と退去強制令書を出されても、トルコではクルド人への迫害が依然として続いています。そのため、迫害を恐れ帰国できない多くのクルドの人々は、日本の厳しい難民認定状況を認識しつつも難民申請を繰り返さざるを得ないのが現状です。

しかし、今回、再提出される予定の法案では「難民申請を3回以上行っている人については、強制送還の対象とする」「強制送還を拒否した人には刑事罰を科す」などの内容が盛り込まれています。現状の「難民申請中は強制送還手続きを停止する」という制度を大きく変更するものであり、クルド難民を窮地に追い込む法案だと考えます。
トルコ国籍クルド難民への厳しい難民認定状況を改善しないまま、この法案が成立し適用されれば、クルド難民申請者たちは形ばかりの難民審査を二度受け、不認定にされた後に、次々と強制送還されてしまうことが容易に想像できます。
また、強制送還を拒否した場合には、そのことに対して刑事罰が科され、刑務所に入れられ、刑期を終えたとしても刑事罰が付いたことを理由に、そのまま入管収容施設に移送され、強制送還を拒否すれば、再度、刑務所に逆戻りとなり、一生涯、日本社会に出て来られないような状況に陥ってしまいます。

欧米諸国ではトルコにおけるクルド人への迫害は周知の事実です。2021年の国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告によると、トルコ出身の難民申請者(主にクルド人)の難民認定率は、カナダでは95%、アメリカ87%、英国79%、オーストラリア73%がとなっています。トルコ政府との友好関係に配慮し、難民認定せずに帰国を強いている日本の認定状況が極めて特異であると考えます。
また、2022年11月には、国連の自由権規約委員会から、日本の入管制度や難民認定制度について改善を求める勧告が出ています。政府の入管法案はこれを全く反映しておらず、国際基準とは程遠いものとなっています。

私たちはこの法案の危険性を日本社会に広く知ってもらうために、2020年から講演会や写真展などを繰り返し開催し、積極的な発信を行ってきました。クルド難民申請者の当事者の方々にも登壇頂き「私たち難民として認めて欲しい」「日本で安心して暮らしたい」という声を伝えてきました。多くの参加者から「このような法案を成立させてはいけない」との声が上がり、それは2021年に政府から提出された「入管法改正案」の廃案の動きにも繋がっていきました。
在日クルド人をテーマにした映画や小説などの作品も公開され、日本で暮らすクルド難民の状況が日本社会に知られるようになりました。
今、求められているのは、難民申請者を排除するための法律ではなく、共に暮らしていくために包摂するための法律だと考えます。

私たちは難民申請者の排除を目的とする、政府、与党が提出予定の入管法案に強く反対します。

2023年1月15日
賛同団体(五十音順)
クルド人難民Mさんを支援する会
クルド難民デニスさんとあゆむ会
在日クルド人と共に